「前回もらった薬と今回別の症状でもらった薬が同じ薬なのですが・・・」とよく相談に来られます。
薬の作用は1つとは限りません。同じ薬を高血圧の場合と狭心症の場合に使うことがあります。また、解熱鎮痛剤は、痛みを抑える作用、消炎作用(炎症をやわらげる)、解熱作用(熱を下げる)などの作用があり、痛いときだけでなく、熱があるときも処方されます。歯科で痛み止めをもらい、内科で解熱剤をもらうと、同じ薬だったということもあるわけです。
本当に小さな粒1粒ですが、血液の流れにのって、あなたの体の中をくまなくかけめぐり、いろいろな威力を発揮してくれます。薬って本当に不思議なものだと思いませんか?
「眠れない」と一口にいっても「寝付きが悪い」「途中で目が覚める」「夢をよく見る」などいろいろなケ-スがありますね。それに合わせるようにうまい具合に睡眠薬の中にも、のんで「すぐに眠くなる」ものや「朝までぐっすり」といった「早く効くもの」と「長く効いているもの」があります。睡眠薬の効き方にもいろいろあって症状によって使い分けられます。そういう意味では、「効き目が早い」タイプの方が、「作用が強い」という印象を持つかもしれませんね。
ばい菌が体の中に侵入し、体の防御力に打ち勝って増殖すると、感染を起こします。例えば、風邪をひいた時や、外傷によって化膿した時などがあります。
このような場合、その原因菌にどの薬が有効に効くのかを考慮した上で、抗生物質が処方されます。
抗生物質は、私たちの体の中に侵入してきたばい菌の発育を抑える働き(除菌作用)や、直接ばい菌を殺す働き(殺菌作用)をします。しかし、瞬間的にばい菌を殺すわけではありません。血液中の薬の濃度をある一定量以上に保たないと、その効果が期待できないのです。ですから、一定時間ごとに決められたとおりの服用が必要です。
熱が下がるとすぐに服用をやめる方がいらっしゃいます。熱が下がっていても抗生物質の服用を中止するとばい菌の増殖が復活する恐れがありますので、処方された日数分は最後までのみましょう。
また、抗生物質の中には牛乳と同時にのむと吸収しにくい複合体を作るものもあるので、注意して下さい。
薬をのんでいると、日に数回服用のわずらわしさ、ましてや薬の量が多かったり、のみにくかったりするとついついのむのがいやになってしまいますね。
薬には症状がなくなればやめてもいいくすりと、症状がよくなったからといっても忘れずにのまなくてはならない薬があります。やめてもいい薬には、痛み止め、解熱剤、かゆみ止め、せき止め、便秘薬、下痢止めなどがあります。催眠剤も自然に眠れるようになればのむ必要はありません。
忘れずにのまなくてはならない薬には、血圧を下げる薬、コレステロ-ルをコントロ-ルする薬、けいれんを止める薬、糖尿病の薬、心臓の薬、アレルギ-の薬などがあります。これらの薬は、症状が軽くなったり調子がよくなったといって、つい薬をのむのを忘れたりやめてしまうと、せっかく薬によってコントロ-ルされていたものが、もとに戻ったり、かえって悪くなることさえあるのです。薬をのむのをやめてもいいと言われない限り、処方されたお薬はその日数分のんで下さい。
薬の多くがもつ副作用のひとつに、胃腸障害があります。これは薬を服用することによって、胃の粘膜を薬が直接刺激して胃粘膜を荒らしてしまうことが原因です。また、薬の作用として本来人間が備えている胃粘膜を保護する作用を抑えてしまうものや、消化管の運動を低下させてしまうものもあります。
胃腸障害を予防するためには、薬をたっぷりの水といっしょに服用したり、胃の中に食物が入っていて空っぽの状態よりは胃壁への刺激が少ないといわれる食後にのんだりします。
しかし、鎮痛剤や抗生物質などは、胃腸障害を起こしやすく、その予防のために胃薬がいっしょに処方されているのです。「胃は丈夫だ」と言ってのまないのではなく、あなたの胃を薬からやさしく守ってくれる薬ですので、是非いっしょにのんで下さいね!
「前はこの小さい錠剤だったのに、今回から大きな錠剤になりました。強い薬に変わったのでしょうか?」「この薬は2.5mg、この薬は100mg。だから100mgの錠剤の方が強い薬でしょ!?」などよく質問されます。
薬同士の強弱は大きさや含有量によっては比較できません。まず大きさですが、製薬会社ができるだけ服用しやすく効果が最大限に現れるように研究を重ねて決定しています。薬によっては大きくてのみづらいものもありますが、現在の研究ではそこまでの大きさしかできないのでしょう。しかしながら、「あの錠剤は大きすぎてのめない」「どうしてものみづらい」「気持ちが悪くなる」という方がいらっしゃれば医師又は薬剤師に相談して下さい。他にあなたの症状に合う薬があれば変更になるかもしれませんし、服用法でよいアドバイスができるかもしれません。
含有量についても全く同じ成分であれば、50mgと100mgでは100mg錠の方が強いということがいえます。しかし、成分が違い、体の作用の仕方も違うものを含有量によって強弱はつけられません。「降圧剤、どちらが強いんですか?」と、2種類の薬を持ってこられる方がいらっしゃいますが、同じ降圧剤とはいっても簡単にどちらが強いかとはいえないのです。
薬の効き方は、個人個人によって違います。例えば、鼻水を止める薬の場合、ある人ではよく効いて気分爽快。しかし、ある人では鼻水は一応止まったけれど、眠気やだるさが強くて気分が悪かったりします。
また、個人差だけではなく、その時の体調やその人の気持ちなども大きく関わってきます。「この薬は効かない!」と思いながら服用するよりも、「この薬で病気と闘うぞ!」と思いながら服用する方が、薬によっては効き目も現れやすいのです。例えば睡眠薬などでは、眠れないという人に整腸剤を渡し「よく眠れる薬ですよ。」と渡したところ、たいへんよく効いたという話を聞きます。こういう話はよくあることで、このような効果を『プラセボ効果(にせ薬の意味)』と呼んでいます。
『病は気から』の諺もまんざら嘘ではないのです。薬をもっと信頼してのんで下さい。ただし、しばらく続けても全く症状の改善がみられないときは、ご相談下さい。
アスピリンは、熱を下げたり(解熱)、痛みをやわらげたり(鎮痛)する薬として昔から使われている有名な薬です。
しかし、アスピリンをのむと出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりすることがあります。これは、アスピリンが、血液中の血小板(出血時に出血を抑えようとする物質)が集まろうとする力を弱める働きをもっているためなのです。
この作用を利用して、脳梗塞や心筋梗塞の原因である血栓ができることを予防しようという目的でよく処方されます。また、このような作用は解熱・鎮痛作用よりも少量で効き目を発揮しますので、よく成人の方にも『小児用バファリン』が処方されます。
アスピリンが、薬として世の中に出てから、約100年になろうとしていますが、今になって、また新しい薬としての道が開けたのです。いかにも『古くて新しい薬』といえるでしょう。
※市販品の小児用バファリンにはアスピリンは含まれていません。
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