私たちの骨は決して無機物ではなく、生きています。 そのため常に古い傷ついた骨が吸収されて新しい骨を形成するリモデリングが行われています。
しかし、骨の材料となるカルシウムの不足やタンパク質の不足が慢性化したり、 生活習慣病などで骨への血流が悪化したり、 無月経・閉経や副甲状腺疾患、ステロイドの内服などでホルモンバランスが悪化すると、 正常なリモデリングが行われなくなり骨の形成が吸収に追いつかなくなります。 そうやって、知らず知らずのうちに骨の量が減少して、軽い怪我でも骨が折れるような事態になってしまう骨粗鬆症が発生します。
骨粗鬆症とは 骨の量(骨密度)が減って骨の内部がスカスカになり、強度が低下してわずかな衝撃でも骨折しやすくなる病気です。
骨を壊す働きと作る働きのバランスが崩れることが原因で、加齢や閉経による女性ホルモンの減少が大きく関わるため、特に高齢の女性に多く見られます。
初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると背骨が押しつぶされたり、転倒で足の付け根を骨折したりします。これらは「寝たきり」や要介護状態になる主要な原因となるため、定期的な検診と、食事・運動による予防が非常に重要です。
下の表は、要介護度ごとに「介護が必要となった原因」をまとめたものです。
転倒による骨折は、認知症・脳血管疾患に続き上位3位に入っています。
また、死亡率との関係についても骨粗鬆症自体が年齢の要因を差し引いても死亡率が14倍に上昇することが報告されており、実際、骨粗鬆症による骨折で多い大腿骨頚部骨折の1年後の死亡率は22%と、決して癌に引けを取らない死亡率になっています 。
また、骨粗鬆症に対する治療により死亡率を11%下げることができたとも報告されています。
骨粗鬆症は骨折するまでわからない沈黙の疾患であり、死亡率や要介護状態とも深く関連する疾患なのです。
要介護度別にみた介護が必要となった主な原因 (2022年)
(単位:%)
| 現在の要介護度 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総 数 | 認知症 | 16.6 | 脳血管疾患(脳卒中) | 16.1 | 骨折・転倒 | 13.9 |
| 要支援者 | 関節疾患 | 19.3 | 高齢による衰弱 | 17.4 | 骨折・転倒 | 16.1 |
| 要支援1 | 高齢による衰弱 | 19.5 | 関節疾患 | 18.7 | 骨折・転倒 | 12.2 |
| 要支援2 | 関節疾患 | 19.8 | 骨折・転倒 | 19.6 | 高齢による衰弱 | 15.5 |
| 要介護者 | 認知症 | 23.6 | 脳血管疾患(脳卒中) | 19.0 | 骨折・転倒 | 13.0 |
| 要介護1 | 認知症 | 26.4 | 脳血管疾患(脳卒中) | 14.5 | 骨折・転倒 | 13.1 |
| 要介護2 | 認知症 | 23.6 | 脳血管疾患(脳卒中) | 17.5 | 骨折・転倒 | 11.0 |
| 要介護3 | 認知症 | 25.3 | 脳血管疾患(脳卒中) | 19.6 | 骨折・転倒 | 12.8 |
| 要介護4 | 脳血管疾患(脳卒中) | 28.0 | 骨折・転倒 | 18.7 | 認知症 | 14.4 |
| 要介護5 | 脳血管疾患(脳卒中) | 26.3 | 認知症 | 23.1 | 骨折・転倒 | 11.3 |

上の図は、私たちの骨強度の一生をグラフ化したものです。
骨の最大骨量(PBM peak bone mass)は、若いうちに決まってしまいます。この時期に栄養をしっかり摂って運動をすることで、最大骨量を上げることが大切です。
中年になると閉経までは一定の骨量で推移しますが、栄養不足や運動不足の状態、糖尿病や腎機能障害やタバコによる肺疾患生活習慣病を患うと骨が徐々に弱くなってしまいます。また、閉経後は急速に骨量が減少します。蓄えた骨量の減少を緩やかにするために、バランスの取れた栄養摂取と定期的な運動を心がけましょう。
60歳から、骨密度が骨粗鬆症領域に入る方が増えてきますので、一度も検査をしていない場合は、骨密度の健診をお勧めします。
骨粗鬆症になった場合は投薬治療が必要になります。骨折が生じる前に治療開始できるようにしましょう。
骨強度を上げる方法
思春期まで: 最大骨量(PBM)を増やすため、若いうちの運動(特にジャンプ運動)や、バランスの取れた食事が重要です。
中年期・閉経後: 骨量減少予防と骨質改善のため、カルシウム・ビタミンD・タンパク質などの栄養摂取、適度な運動、生活習慣病の予防・治療を心がけます。
骨粗鬆症と診断された場合: 骨折を防ぐため、転倒予防とともに、骨粗鬆症治療の導入が必要になります。
Q.骨粗鬆症に痛みなどの自覚症状はありますか?
初期の段階では、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
骨粗鬆症は別名「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」と呼ばれており、骨折して初めて気づく方が大半です。
しかし、病気が進行すると以下のようなサインが現れることがあります。これらに当てはまる場合は注意が必要です。
・背中が丸くなってきた(円背)
・身長が若い頃より2cm以上縮んだ
・重いものを持つと腰が痛む
Q. 検査はどのようなことをしますか?すぐに終わりますか?
当院では「DEXA(デキサ)法」という、正確で痛みのない検査を行っています。
ベッドに横になっていただき、腰椎(腰の骨)と大腿骨頸部(股関節の骨)の2箇所に微量のエックス線を当てて骨密度を測定します。 検査時間は着替えを含めても 10分〜15分程度 です。痛みは全くありませんのでご安心ください。
Q. カルシウムのサプリメントを飲んでいれば大丈夫ですか?
サプリメントだけでは不十分な場合が多いです。
カルシウムは骨の材料ですが、それを骨に定着させるには ビタミンD が必要です。また、骨の形成を助ける ビタミンK も重要です。 サプリメントはあくまで補助的なものです。まずはバランスの良い食事(乳製品、小魚、大豆製品、きのこ類など)を心がけ、日光浴や適度な運動を組み合わせることが大切です。すでに骨粗鬆症と診断されている場合は、お薬による治療が必要です。
Q. 治療の薬はずっと飲み続けなければなりませんか?
自己判断で中断せず、医師と相談しながら継続することが重要です。
骨密度はすぐに増えるものではなく、治療には年単位の時間がかかります。自己判断でお薬をやめてしまうと、再び骨密度が低下し、骨折のリスクが高まってしまいます。 現在は、毎日飲む薬だけでなく、週に1回・月に1回の飲み薬や、半年に1回の注射など、患者様のライフスタイルに合わせた多様な治療薬があります。「薬を飲むのが大変」と感じたら、まずは主治医にご相談ください。
Q. 骨粗鬆症の薬を飲んでいると、歯の治療ができないと聞きました。
治療は可能ですが、歯科医師への事前申告が必要です。
骨粗鬆症の薬の一部(ビスホスホネート製剤など)を使用中に抜歯などの外科的な処置を行うと、ごく稀に顎の骨に炎症(顎骨壊死)が起きることがあります。 しかし、お薬を休むことによる骨折リスクの方が高い場合もあるため、勝手にお薬を止めないでください。 歯科を受診する際は必ずお薬手帳を持参し、「骨粗鬆症の治療中である」ことを歯科医師にお伝えください。当院では歯科口腔外科とも連携して安全な治療をサポートします。
Q. 男性も骨粗鬆症になりますか?
はい、男性も発症します。
女性に比べると患者数は少ないですが、男性の骨粗鬆症は「生活習慣病(糖尿病、慢性腎臓病など)」や「喫煙・過度の飲酒」が原因で起こることが多いのが特徴です。 特に70歳以上の男性や、生活習慣病をお持ちの方は、一度検査を受けることをお勧めします。
Q. 運動はしたほうがいいですか?転ぶのが怖いです。
無理のない範囲での運動は、骨を強くするために非常に有効です。
骨は負荷がかかることで強くなる性質があります。激しいスポーツをする必要はありません。「ウォーキング」や「片脚立ち」、「スクワット」など、かかとに刺激が伝わる運動や筋力を維持する運動が効果的です。 ただし、膝や腰に痛みがある場合や、転倒のリスクが高い方は、整形外科医や理学療法士に相談し、安全な運動メニューの指導を受けてください。
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