日本では、かつてないスピードで超高齢化が進行しています。池田市、豊中市、箕面市、吹田市、川西市なども同じ傾向にあります。伸び続ける平均寿命と、自立した生活が可能な期間である健康寿命との間には平均で10年程度の開きがあり、医療や介護費用の増加の一因となっています。
また高齢者の腰痛と膝痛は有訴率が高く、ADLを大きく低下させる原因にもなっています。そのうち変形性膝関節症は、有病者数が2,500万人とも言われ、手術加療も多く行われています。人工膝関節置換術は年々増加しており、全国で年間10万件以上の手術が行われるようになっています。当院でも人工膝関節置換術の件数は増加しています。
年 | 件数 | |
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平成24年 | 73 | |
平成25年 | 59 | |
平成26年 | 72 | |
平成27年 | 56 | |
平成28年 | 64 | |
平成29年 | 63 | |
平成30年 | 81 |
変形性膝関節症は、加齢変性や外傷等により軟骨や骨が傷むことをきっかけに、関節の変形・下肢アライメント(骨の並び)不良や関節不安定性を生じ、疼痛や関節運動の障害をきたす疾患です。人工膝関節置換術は関節表面をコンポーネントにより置換し、アライメントを中間位 (真っ直ぐな脚) に改善し、膝関節を安定化させることで、膝痛を改善させます。手術では大腿骨や脛骨を骨切りしてコンポーネントを設置しますが、正確な骨切りを行うことが、下肢アライメントの改善や関節の安定化のために非常に重要になります。
図1 人工膝関節のコンポーネント
図2a 術後膝関節単純X線
図2b 術前後の立位長尺
関節表面の骨切りを行い、コンポーネント(図1)で置換します。
術後X線では関節表面に各コンポーネントが設置されています(図2a)が、術前のO脚が術後には中間位に改善されています(図2b)。
当院では手術を正確に行うことができるコンピューターナビゲーションを用いた人工膝関節置換術を2014年10月より導入しており、最近ではほぼ全例をナビゲーションガイド下に行っています。人工関節手術に用いられるナビゲーションは術中に骨に取り付けたトランスデューサー(アンテナ)を赤外線カメラで捕捉することにより、骨や骨切りガイドの位置を把握して正確な手術を行うための補助となります (精度は誤差1mm/1°以内) 。(図3)
ナビゲーション人工膝関節置換術の成績については多くの報告がなされていますが、従来の手術に比べてコンポーネント設置の正確性が上がり、目標とした角度から3°以上の誤差を生じる割合が改善します。当院での手術症例の検討においても同様の結果が得られており、従来手術との比較において術後アウトカムの改善に役立っています。
十分な保存的加療を行っても膝関節痛や膝関節機能障害が改善せず、困っておられる患者さまは手術の適応があるかもしれません。一度、近隣の整形外科クリニックや診療所へご相談して下さい。
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