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使命と活動

甲状腺がん

甲状腺のある場所をご存じですか?

甲状腺

ノドボトケの下に位置し、気管の上に蝶々が羽を休めてとまっているように甲状腺があります。右の羽を甲状腺の右葉、左は左葉と呼んでいます。この羽の下で気管の横の左右に、声帯を動かす神経が走っています。その名は反回神経。胸の奥で大きな血管をくぐってU-ターンしてノドボトケのところにやってくるのでこの名前があります。なかなかいい名前ですね。
気管の後ろには食道があります。食事は一日3回。それに比べ呼吸は1分間に15回も。通過する交通量が全然違うんですね。だからなんでしょうか?気管は軟骨でパイプ状になっていて、常に空気が抵抗無く通るようになっています。

それに対して食道は、普段はぺっしゃんこで食事が通るとき押し広げられるようになっています。面白いですね。
頚は英語でneck、あそこが狭くて交通渋滞のネックだと言われる、あのneckです。
頚の断面積の1/2~2/3は頚の骨、筋肉で占められ、のこりの狭いところを頭に血を送る血管、神経、そして気管、食道がひしめき合って通っています。食道が遠慮して普段ぺっしゃんこなのもわかるような気がします。せまいスペースの有効利用です。
鼻から空気が吸い込まれ、口から食べ物が入ってきて、喉の奥でばったり出会うのに、どうして空気は前の気管へ、食事は後ろの食道へうまく行くのでしょう。まさに線路のポイントの切り換えと一緒です。うまく官制されています。でも時々、気管にものが入ってむせますね。ポイントの 事故は大変です。

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こんな環境下で癌ができたら?

まわりへ我が物顔で浸潤して行く癌が。でも、一般的に甲状腺癌(分化癌)は大人しく、これでも癌かと思うほどです。自覚症状もなく長年放置されています。たとえ腫瘤が大きくなってきても、痛みもなく、よほどのことがないと自ら患者さんが受診されることは少ないものです。
しかし、こんな大人しい分化癌でも長年放置していると、恐ろしい未分化癌に転化することがあります(腫瘍の性格が突然とてつもなく悪くなってしまう)。長年放置された癌、つまり年輩の方に見つかってくる癌は要注意で、そう甘くはありません。
とにかく、診断時の年齢が甲状腺癌のその後の経過に大きく影響するのです。

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甲状腺癌が進行してきたらどうなるのでしょう。

声が犠牲になったり、 食事の摂取が難しくなったり、非常に複雑、深刻な問題となってきます。辛いですね。だから、早い内に甲状腺癌は治療されるべきなのです。頸部周囲のリンパ節へ転移していることが結構あります。
乳癌では腋窩のリンパ節転移の程度で予後が決まると言われています。転移したリンパ節の数が多いほどよくありません。戦国時代にたとえれば、敵(癌)の手に見方の出城(リンパ節)が次々陥落してゆくようなものです。
一方、甲状腺癌ではそうではないと私は思います。もちろん転移は無いにこしたことはないけれど、見方のリンパ球が敵をこの出城に閉じこめて一生懸命戦っているようにみえるのです。本来、リンパ節はバイ菌などの外的に対する防衛線ですものね。でも、これも程度問題。長く放置しておいては。早く手術の援軍を送るべきです。決断がいるけれど、火の手がまわらない内に、早めに消火すべきです。
私は、30年以上、甲状腺の癌の手術を行ってきました。甲状腺癌の手術は一級の難しさだと思います。狭い頚部に重要な器官・臓器がひしめき合い、予断を許さない手術です。手術が治療のすべてを決することやその難易度など、乳癌と大分おもむきが異なります。非常にデリケートな手術です。
巨大な頸部腫瘤、嗄声そして呼吸困難を訴えてようやく来院された時は、すでに時遅し。長年おとなしくしていた癌が突然急激に未分化癌へと転化し、しかも肺転移を伴っていることも少なくありません。大人しい分化癌の頃、切除されていればと痛恨の極みです。
このようにメスの及ぶ範囲を越えた未分化癌には、「頻回分割照射」という放射線治療を腫瘤に対して私たちは行います。一日2回照射をするのです。一日1度の通常の照射法では、 照射の最中にも腫瘍が増大してきた経験がありました。それぐらいこの腫瘍の増殖は早く照射が間に合わなくなってくるのです。残念ながら未分化癌を根治せしめるのは不可能ではないかと思われるほどです。でも、頻回分割照射の導入により悲惨な上気道の閉塞で亡くなるのを防げるようになりました。このような手遅 れの状態にならないためにも、転化する前の大人しい甲状腺癌の状態で手術しておきたいものです。そして不幸にも未分化癌で来院された方には、上気道の閉塞による悲惨な呼吸困難を頻回分割照射でなんとか解放すべく治療に取り組んでいます。

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甲状腺癌のラジオアイソトープ治療について

甲状腺は甲状腺ホルモンを作ります。甲状腺ホルモンはアミノ酸とヨードを材料にして作られます。放射能を放出するヨード(ラジオアイトープ)を服用すると、トロイの木馬よろしく甲状腺組織(良、悪にかかわらず)に放射性物質が甲状腺組織にとりこまれます。放射されるガンマ線で組織が破壊されます。
甲状腺細胞が増殖してホルモンを沢山分泌しているバセドウ病や、頚部に再発・遣残した腫瘍や肺などに遠隔転移した腫瘍が標的になります。これほど理にかなった素晴らしい治療はないと思います。まさにターゲット治療です。

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甲状腺の働きをご存じですか?

甲状腺組織

甲状腺組織を顕微鏡で眺めますと、まるで田植えのころの田んぼのようです。田に満々と水がはられています。畦には甲状腺の細胞が並び、ここでホルモンを作っています。そして出来た甲状腺ホルモンをその水の中に蓄えられています。必要になった時はくみ上げて血管へ。血管内に分泌された(内分泌といいます)甲状腺ホルモンは血液に乗って全身をめぐり全身の細胞に働きかけます。平時は静かに全身の細胞、全臓器に優しく語りかけ、陰でその働きをささえ、細胞の新陳代謝を促しているのです。

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甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったら?

心臓の鼓動は運動しているように高鳴り、体温は上昇し異常に発汗、そして精神状態はイライラになります。まさに鬼の撹乱です。これで季節が夏となると患者さんはたまりません。体全体の細胞にとってもかなりの負担です。眠る間もなく働け、働けと尻をたたかれ、やがて体力は消耗してゆきます。
しかし、同じ消耗性疾患の癌と異なり、薬(抗甲状腺剤)の効果があってホルモンが正常になると、嵐が嘘のように静まり、症状は回復します。このような光景は内分泌疾患の共通していえることです。あまりに症状がひどいときは他の患者さんには申し訳ないが診察の順番を繰り上げて治療する配慮もしているほどです。
薬を服用する時、知っておかなければならない副作用があります。まず、血液中の白血球がまれに減少します。あまりにも減少すると、扁桃腺炎のようにのどが痛くなり、高熱が出ることもあります。すぐ主治医に連絡です。また、薬負けで湿疹は肝機能の障害が出ることもあります。いい働きをしてくれても、所詮、薬は体にとって異物であるということを知っておいてください。
治療はじっくり気長に取り組んでいただかなければなりません。しかし、このような状態ですから気分が落ちつかず、薬を規則正しく服用することはかなりの忍耐が要ります。折角服用しておられるのにどうして効果がないのだろうと思っていると、ホルモンの働き で腸が動きすぎて下痢をおこし、薬の吸収が出来ないということもあります。

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甲状腺ホルモンの分泌が少なくなったら?

このバセドウ病の症状と正反対の症状の病気として、頚が同じ様に腫れても、甲状腺の機能が低下しホルモンの分泌が低下する慢性甲状腺炎があります。報告した橋本先生の名を冠して、Hashimoto 病とも呼ばれています。甲状腺からのホルモン分泌が減少して、逆にすべての細胞が意気消沈となります。このバセドウとHashimotoの両者、症状は正反対でもどちらも自己免疫疾患、つまり自分で自分の体を攻撃する自虐的な病気なのです。バセドウ病や橋本病の女性がお腹に子供を宿している時は休戦状態で症状は軽くなりますが、出産がすめば戦闘開始、再び症状が出てきます。
とにかく内分泌の病気は全身に影響が出てきます。でも治療効果があれば、あとは青空。本当に内分泌疾患はけったいであります。
頚にしこりが出来ても大半は良性なのです。
ご安心下さい。嚢胞となって液を貯めている場合もあり、この場合は注射器で穿刺して液を抜いていればもう貯まってこないこともあります。もちろんその中にガン細胞がいないことを確認して、あとはウオッチングです。甲状腺、つまり内 分泌臓器に出来る病気には、ホルモンの分泌異常がおきる機能の異常と、ホルモンの異常はふつう伴わず腫瘤が出来てくる形の異常があるということがおわかりいただけましたか。これらの代表がバセドウ病とガンなのです。

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私たちの外科では

早期甲状腺分化癌に加えて、進行甲状腺分化癌低分化癌・未分化癌の手術治療を中心として行っています。
もちろん、バセドウ病や良性腫瘍の手術もしています。
手術に際して各科の協力は必須です。
声帯の動きなどに耳鼻科的診断治療が必要になることもあります。また、食道外科も関係してきます、整形外科も
。 術中の迅速病理診断を行う病理診断科や頻回分割照射を行う放射線科も。
最新の機器もそろっています。
診断・手術次第のプランニングのCTは基本です。
当院では3D-CTを患者さんにも紹介、眼前で動かしてご紹介しています。
外来診察室で、病棟でも。
立体的に病変を見ていただいて、手術方法をご説明して、手術承諾をいただいています。

総合病院として、安心して出来る手術に取り組んでいます。